ペリリュー 楽園のゲルニカの登場人物からわかる人間の本質とは?

2017年日本漫画家協会賞・優秀賞受賞の本作品。

ペリリュー

数ある戦争を扱ったマンガ作品の中での特徴は、以下の2点といえるでしょうかね。
  • 洞窟陣地などを利用しゲリラ戦法で日本軍が米軍に徹底抗戦した、パラオのペリリュー島の戦いを題材に取り上げた
  • 舞台・戦い・人間模様でリアリティを追求しながら3等身のかわいらしいキャラデザで、見た目を読みやすく仕上げている


ペリリュー島の戦いってご存知ですか。

僕はこの作品を手に取って初めて知りましたね。学校の歴史の授業で取り上げていなければ、専門家や何かのきっかけがない限り知る機会はないですかね。

こちらにペリリュー島の背景を知る上でわかりやすい報道動画あります。



ペリリュー島はフィリピンの東に位置するパラオ諸島南部の小島です。

パラオは楽園の島として聞いたことがある方も多いかと思います。僕がそうですw

当時このぺリリュー島は東洋一の飛行場があり、日本軍にとって南方の最大の拠点だったフィリピンに無補給で爆撃機を飛ばせることから、激しい戦いの舞台となったわけです。

さて、背景はこのぐらいにして、肝心の中身の話です。

現在日本人のメンタリティーをベースにした、主人公の兵士、田丸



本作品は、日本軍でこの島に派遣された一等兵、田丸の視点を中心に描かれています。

架空の人物ですが、モラルをもった現在日本人のメンタリティーをベースにしているので、当時の史実に対して非常に共感しやすい作りになっています。

人物そのものや、その見た目は大きくデフォルメされていますが、起こることは取材や各種資料をもとにした史実に忠実です。

理不尽な形で簡単に命を落としてしまう兵士たち



突然のスコールに服を脱い身体を清めていたところ、空爆警報に驚いて足を滑らして頭を打ち死亡する兵士とかも描かれているんですよね。

当時の激しい戦闘の中の出来事としてはおそらく小さなことだったと推測されますが、現代と比較して当時の悲惨な状況を推し量るには、とても意味のある事象ですね。

それぐらい簡単に身近な命が失われる時代だったということが、非常にリアルに伝わってきます。

そして、その死を亡くなった本人と内地のいる遺族のために、美化した虚構の話を作り上げて手紙に記すわけですよ。

こんな風に。

見事敵機を撃退するも、敵機銃掃射を受け 一弾不幸にして胸部を貫通す



何とも日本人らしい気遣いといえるのではないでしょうか。


別のシーンでは、仲間の兵士が敵に恐れをなして痙攣を起こしたことで暴発した銃弾が身体を貫通し、あえなく死亡してしまう兵士が描かれています。

やるせないですね。感情移入してしまいます。

こういったシーンはあえて作者が挿入しているものと推測されます。

敵軍に撃たれて怪我をして、痛みに耐えかね、仲間に銃殺を懇願する兵士



島田少尉 もうダメです 俺を置いて行って下さい・・・少し休めば大丈夫だ・・・いや少尉 自分で分かります この傷じゃ もう俺は助かりません 少尉の銃で俺を殺して下さい・・・ど どうしてもか村上・・・



説明不要ですね。。

こういった非常時にせこい悪だくみをするのも人間



敵軍に陣地に攻め込まれたとき、田丸たちは死体の貫なる地面の土の中に身を潜めて難を切り抜けます。

田丸の上役にあたる隊員の一人はためらうことなく、死んだ仲間が腰につけていた水筒でのどを麗します。

田丸はそれをみて一瞬だじろぎますが、この男はまったく意に介しません。

その後、この男は単独行動をとり、味方がねぐらとする洞窟に忍び込み、食料を盗みます。

身動きの取れなくなった重症の仲間の兵士が洞窟の奥でうめいているのをききつけると、ためらうことなく持っていたナイフで喉を切り裂き殺してしまいます。

このような戦時下で自らの命が危機に瀕しているときにこそ、その人の人間性が現れるという、様々な古典的作品が取り上げてきた普遍的テーマですね。


この他、人間が生きていく上で欠かせない水をめぐる離れ小島での攻防など、生命をかけた人間同士の争いのシビア面もよみごたえがあります。

日本漫画家協会賞受賞もうなづける、貴重な史実性、メッセージ性、マンガならではの読みやすさをもった稀有な作品といえるでしょう。



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