ブルーピリオド3巻~好きなことをやるっていつでも楽しいって意味じゃないよ

※1巻からの感想はこちら。
この3巻を読んでこころを動かされたのは次の2点です。
芸大受験を目前に控えた八虎が、美術学校の大葉先生からの描いた絵の指摘を受けて、自分が好きな「絵」に対して自分のスタイルを見出していく過程で苦しみながらも成長していく過程
同じ芸大を目指している天才肌で孤独な高校生、世田助と、対照的に社交的で学業全体も優秀だが美術の経験が浅い八虎が関係性を少しずつ温めていくプロセス
自分の絵のスタイルを見出していく過程について
大葉先生は絵に対する対応力が大事ということで、様々な抽象度の高い課題を八虎をはじめとする生徒に投げかけていきます。
「わたしの大事なものをテーマに描きなさい」
「タイトルをつけて描きなさい」
最初は課題をどう読み解き、そこにどう自分を最適に表現すべきかうまくつかめなかった八虎ですが、複数の課題をこなして先生からフィードバックをもらっていく中で、考え方と具体的落とし込む方法を学んでいくのです。
このプロセスは油絵というアートに限られた話ではありませんね。
現代という正解を見出しにくい世の中でどう日々生きていくかという、万人にあてはまるテーマなわけです。
だからこそ、普段の自分自身の仕事に対するスタンスを問われているようで、絵に携わっている人以外も共感せざるを得ないわけです。
自分と全く異なるタイプの人との関係づくり
言うまでもなく人はみなルックス、能力、経験、考え方が違いますね。
それでも人間という個体同士が協力して力を発揮できるのは、言語や絵などを媒体として細かなことまで他者と対話・共有
できる力があるからです。
だからといって、誰でも彼でも同じタイミングや接し方で同じ程度の共感が得られるわけではないですね。
人によっては何度話してもなかなか共感が得られてないこともしばしばです。
逆にふとしたことがきっかけでそれまで距離が遠かった人と急に仲良くなることもしばしばです。
3巻最後のシーンでは全く異なるタイプの八虎と世田助がひょんなことから初詣に二人で出かけることとなり、言葉を交わす中で少しずつ相互理解をはかっていく姿が描かれています。
お互いを心の中で特別な存在と思っていながらも全く異なるタイプであることを自覚してぎこちない会話をしているのに惹きつけられてしまいます。
これは、日ごろから僕が人との相互理解、共通認識づくりに苦労していることの証でもあるわけです。
しかしきっと、こんな風に思うのは他の読者も同じではないかと思います。
社会現象、身近な会社などで日々起こっている出来事をみれば、人同士の相互理解ほど難しいものはないと思うからです。
ではどうすればもっと多くの人が短時間で多数の人と相互理解することができるのでしょうか。
自分の認識を絶対視しない謙虚さ、他人の心に飛び込む勇気。
この二つが大事なんだと思います。
※その後発売された4巻の感想はこちら。
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