バカレイドックスが3巻最終話で完結~物語展開と人間心理が味わい深い
2018年5月にヤングマガジン連載が終了し、単行本3巻で完結した本作品。
※1巻の感想はこちら
3巻は3つのエピソードで構成されており、どの話も予想外の結末となる物語展開の面白さとともに、軌道を逸れてしまう人間心理の背景や奇跡ともいえる回復を見せる人間の奥深さが味わい深いものとなっています。

2巻の終わりから続くエピソードです。
病室から行方不明になった月岡。
病院内で泣いているところを雪野が見つけ心配して声をかけると、逆にトイレに監禁されて拷問を受ける展開になります。
エグい描写が続きます。
この男、幼い頃母親から受けていた虐待行為が元で右耳に障害をかかえ、そこから生まれた幻聴が原因で女性への殺人衝動をかかえていたことが明らかになります。
辰次はそれを見抜いて月野の右耳に治療を施し、雪野をおとりにして月野の行動を監視していたのです。
エピソードの最後における幻聴がなくなった月野の結末も、衝撃的な展開となります。
過去の様々なトラウマが人を狂わす出来事は現実にも多数起きていますね。
どの程度の心への傷がどういう結果をもたらすのかなどは予測できない謎です。
親子、友人同士、恋人・夫婦、上司と部下など、親密な人間関係は一歩間違うと相手に思わぬ傷を負わせることにつながります。
一度深い関係になると、関係性を客観視できなくなったり、抜け出すことが困難になったりしがちです。
親密な人間関係においても支配や依存ではない、適度な距離感と自由さを保ちたいものです。
真魂光の会という土着宗教が支配する那杭村を舞台に、両手を切り取られた絞殺死体が発見されるところから話が展開します。
この死体の検死を行った医師が、辰次の師匠であるマリア先生。
彼女からの支援依頼で辰次、亥三、雪野はこの村と真魂光の会の謎に巻き込まれていくのです。
実は殺害された男の娘がこの真魂光の会の教祖でした。
問題は真魂光の会の教祖ではなく、幹部の桂井という男にあったことが明らかになっていきます。
この村に代々続く水神信仰と教祖の遺伝による合指症という手の病気(指の間に水かきにような皮膚がある)が絡み合い、親子愛と支配欲が絡んだ末に起こった殺人事件でした。
最後は辰次の手術で教祖の合指症は克服され、権力に取りつかれた桂井にも一矢を報い、辰次、亥三、雪野の3人はこの村を後にします。
病気と宗教と人間の欲望。
過去から未来へと決してなくならないこの三つがネガティブに絡み合うととんでもない結果をもたらす一つのエピソードですね。
1話に続き、最終話となる本エピソードでも雪野を辰次と亥三の元に売りとばしたヤクザの甲斐が再び登場します。
甲斐の口から辰次と亥三の母親である犬童百合子と兄の寅太の話が出たことで、辰次と亥三は香港の寅太の住まいに向かうことに。
寅太の部屋は荒らされ行方不明でしたが、情報屋を使い、香港マフィアグループに移植手術の医師として連れ去られたことが判明します。
香港マフィアグループのボスが移植手術が必要な身だったのですが、寅太は自分の助手がこの香港マフィアグループと対立する組織にとらわれてしまったことから、手術を引き受けようとしない状況でした。
香港マフィアグループのボスから寅太の説得を依頼された辰次は、兄の寅太に変わって自ら移植手術を引き受けるのです。
移植手術中、敵対する組織からの襲撃に合いますが、何とか突破し、辰次と亥三は寅太と会うことができます。
そして寅太からの情報を頼りに、母親である犬童百合子がいる病院に辿りつきます。
百合子は自殺未遂後、意識が戻らぬ状態でした。
最後のコマは、目を覚ました母親を、驚きつつうれしそうに覗き込む辰次と亥三、感動で泣きそう表情の雪野の姿が描かれています。
母親が意識を取り戻せた要因は、辰次がかがせた彼の血の匂いだったのです。
闇医師とヤクザが登場するダークな世界観の元に、グロい描写も多かった本作品でしたが、最後は親子愛の成就という形のハッピーエンドでした。
思想の異なる組織間で殺し合うのも人間ならば、兄弟、親子、仲間の間で命を投げ出してでも守ろうとするのも人間です。
思想が異なっていても理解し合える可能性があるのも人間ですね。
切れ味のある絵柄のもと、波乱に富むストーリー展開と人間のもろさや欲の深さと愛の深さが堪能できる作品でした。
もう少し楽しみたかった感があります。
ここにこの漫画の著者である矢樹純さんのブログの記事があり、紙の単行本1巻発売10日後の打ち合わせで、打ち切りが決まったと記載されていました。
電子書籍やマンガアプリでの実績は重視されず、紙の単行本初速の売上で打ち切りが決まってしまうと。
音楽もそうですが、デバイスや人のライフスタイルが急速に変化している中、提供社側が過去の延長の指標だけで未来を判断するのはもったいないですね。
新しいデータの動きはトラッキングしづらいので理解できないことではありませんが、人間の現状維持バイアスのいい例だと思います。
※1巻の感想はこちら
3巻は3つのエピソードで構成されており、どの話も予想外の結末となる物語展開の面白さとともに、軌道を逸れてしまう人間心理の背景や奇跡ともいえる回復を見せる人間の奥深さが味わい深いものとなっています。

シリアルキラー
2巻の終わりから続くエピソードです。
病室から行方不明になった月岡。
病院内で泣いているところを雪野が見つけ心配して声をかけると、逆にトイレに監禁されて拷問を受ける展開になります。
エグい描写が続きます。
この男、幼い頃母親から受けていた虐待行為が元で右耳に障害をかかえ、そこから生まれた幻聴が原因で女性への殺人衝動をかかえていたことが明らかになります。
辰次はそれを見抜いて月野の右耳に治療を施し、雪野をおとりにして月野の行動を監視していたのです。
エピソードの最後における幻聴がなくなった月野の結末も、衝撃的な展開となります。
過去の様々なトラウマが人を狂わす出来事は現実にも多数起きていますね。
どの程度の心への傷がどういう結果をもたらすのかなどは予測できない謎です。
親子、友人同士、恋人・夫婦、上司と部下など、親密な人間関係は一歩間違うと相手に思わぬ傷を負わせることにつながります。
一度深い関係になると、関係性を客観視できなくなったり、抜け出すことが困難になったりしがちです。
親密な人間関係においても支配や依存ではない、適度な距離感と自由さを保ちたいものです。
那杭村
真魂光の会という土着宗教が支配する那杭村を舞台に、両手を切り取られた絞殺死体が発見されるところから話が展開します。
この死体の検死を行った医師が、辰次の師匠であるマリア先生。
彼女からの支援依頼で辰次、亥三、雪野はこの村と真魂光の会の謎に巻き込まれていくのです。
実は殺害された男の娘がこの真魂光の会の教祖でした。
問題は真魂光の会の教祖ではなく、幹部の桂井という男にあったことが明らかになっていきます。
この村に代々続く水神信仰と教祖の遺伝による合指症という手の病気(指の間に水かきにような皮膚がある)が絡み合い、親子愛と支配欲が絡んだ末に起こった殺人事件でした。
最後は辰次の手術で教祖の合指症は克服され、権力に取りつかれた桂井にも一矢を報い、辰次、亥三、雪野の3人はこの村を後にします。
病気と宗教と人間の欲望。
過去から未来へと決してなくならないこの三つがネガティブに絡み合うととんでもない結果をもたらす一つのエピソードですね。
母の秘密
1話に続き、最終話となる本エピソードでも雪野を辰次と亥三の元に売りとばしたヤクザの甲斐が再び登場します。
甲斐の口から辰次と亥三の母親である犬童百合子と兄の寅太の話が出たことで、辰次と亥三は香港の寅太の住まいに向かうことに。
寅太の部屋は荒らされ行方不明でしたが、情報屋を使い、香港マフィアグループに移植手術の医師として連れ去られたことが判明します。
香港マフィアグループのボスが移植手術が必要な身だったのですが、寅太は自分の助手がこの香港マフィアグループと対立する組織にとらわれてしまったことから、手術を引き受けようとしない状況でした。
香港マフィアグループのボスから寅太の説得を依頼された辰次は、兄の寅太に変わって自ら移植手術を引き受けるのです。
移植手術中、敵対する組織からの襲撃に合いますが、何とか突破し、辰次と亥三は寅太と会うことができます。
そして寅太からの情報を頼りに、母親である犬童百合子がいる病院に辿りつきます。
百合子は自殺未遂後、意識が戻らぬ状態でした。
最後のコマは、目を覚ました母親を、驚きつつうれしそうに覗き込む辰次と亥三、感動で泣きそう表情の雪野の姿が描かれています。
母親が意識を取り戻せた要因は、辰次がかがせた彼の血の匂いだったのです。
闇医師とヤクザが登場するダークな世界観の元に、グロい描写も多かった本作品でしたが、最後は親子愛の成就という形のハッピーエンドでした。
思想の異なる組織間で殺し合うのも人間ならば、兄弟、親子、仲間の間で命を投げ出してでも守ろうとするのも人間です。
思想が異なっていても理解し合える可能性があるのも人間ですね。
完結した作品の振り返り
切れ味のある絵柄のもと、波乱に富むストーリー展開と人間のもろさや欲の深さと愛の深さが堪能できる作品でした。
もう少し楽しみたかった感があります。
ここにこの漫画の著者である矢樹純さんのブログの記事があり、紙の単行本1巻発売10日後の打ち合わせで、打ち切りが決まったと記載されていました。
電子書籍やマンガアプリでの実績は重視されず、紙の単行本初速の売上で打ち切りが決まってしまうと。
音楽もそうですが、デバイスや人のライフスタイルが急速に変化している中、提供社側が過去の延長の指標だけで未来を判断するのはもったいないですね。
新しいデータの動きはトラッキングしづらいので理解できないことではありませんが、人間の現状維持バイアスのいい例だと思います。
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