2巻で完結したゲレクシスの意味を考察する
最初の数ページの感想~つかみが半端なく凄い

漫画をめくって最初の10ページでかなり笑わせてくれます。
このつかみは凄いと思います。
焼きあがったバウムクーヘンのうまそうな絵で食欲を刺激される冒頭、バイトの女性が店長の大西に言います。
「”生まれたての宇宙”顔面で表現してみて」と。
ページをめくると40歳のおっさんの味のある顔のアップ。
その後、意思の疎通がうまくいかないバイト女性と大西。
「は!?」
「えっ!?」 大西のひきつる顔。
バイトの女性がまた言う。「店長 今 カメムシの背中 表現してる?」
ちょっと凡人には表現できない世界です。
この奇妙な人をくったような会話劇の妙は最後まで読者を楽しませてくれます。
出会い、変貌、別れ、帰還、新たな旅立ち
この後、大西は公園や森の中などで、人間から転じた摩訶不思議な生物「モウソウ」「正気」「順平」と出会うとともに、自分も「邪悪なジャガイモ」のような顔に変貌してしまいます。
繰り広げられるのは、こんな展開です。
大西の恋愛
↓
恋したはずの女性の顔の変貌
↓
その変貌した女性から触られたことによる自分自身の変貌
↓
二人の姿の更なる変貌
↓
公園から森へと変化する周りの世界
↓
変化した森での新たな同類の生き物(正気という名)との出会い
↓
正気とキスをして親友になる大西
↓
水を求めて彷徨う中、毛むくじゃらの順平という生き物との遭遇と死別
↓
「もし元に戻りたければここで待て」と正気に忠告する森の大木
↓
奇怪な姿で元のバウムクーヘンの店に帰還する3人
↓
奇怪な姿のままビールを飲みながらカツカレー、焼きそばをかき込み、腹を満たす
↓
満腹になって寝た後、目を覚ますと元の姿に戻っている大西。後の二人が消えている
↓
元の生活を取り戻す中、大西はまたあそこに行くか自問自答する
↓
あの公園でこうつぶやく「・・・多分行くな・・・きちんと準備して ”仕方ない”や”たまたま”で割り切れたら人生なんていらないだろ?」
↓
次の瞬間、大西の顔はまたあの「邪悪なジャガイモ」になっていた。(完)
一見奇妙なギャグ漫画のようですが、こうして俯瞰して流れを追うと、きちんとしたストーリー構造をもっていることがわかります。
人生そのもののストーリーですね。
そこには生きる上での大切なメッセージが投げかけられていることがわかります。
受け取ったメッセージとは?その意味を考察
世界は自分がどうとらえるかしだい。
他人に映る世界と自分が見える世界は異なるのです。
別な言葉で言えば、自分の世界の捉え方をもっていないと周りに振り回されてしまうというわけです。
人は人との出会いによりよくも悪くも変化します。
一人ではできないことも複数集まれば成し遂げられることも沢山あります。
それをどう活かしていくかも自分しだいです。
奇怪な生き物への変貌と絶妙なやり取りで笑いをとる会話劇。
この中から僕が感じ取ったことは、こうした人生にどう立ち向かうかという前向きなメッセージでした。
テクノロジーの圧倒的な進化、終身雇用の崩壊と働き方改革、ジェンダー観の変化、家族のあり方など、これまで信じられてきたものが日に日に崩れていく中、こうした一見ギャクに包まれた世界の中に隠れた強いメッセージの読み取れるマンガは、よい刺激となってくれると思います。
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