中世と連動した箱庭、五佰年BOX(いほとせボックス)の秘密を探る〜ネタバレ含むあらすじと感想
イブニング連載中で歴史好きの新人漫画家、宮尾行巳さんの作品。
2017年8月に単行本一巻が発売されたので読んでみました。はっとする設定で、絵もうまく、期待度大の作品といえます。

幼馴染で隣同士に住む大学生叶多と真奈。舞台は彼らが住む家と生活圏。叶多は12年間ずっと真奈に想いを寄せているが伝えられていない。
ある日、叶多は真奈の家の蔵掃除を手伝っていると、真奈から突如婚約者を紹介され、戸惑う。
掃除の最中、何やら人の話すような音がする。声の出所を探すと、それは土の中からだった。
掘り起こすと、数十センチ四方の木箱が出てくる。蓋をあけると、なんとそこには日本の中世時代の街並みとそこに暮らす人々がいた。
それも動いて生きている。
真奈の父親が箱をくれるというので、自宅に持ち帰り、部屋で箱の中を観察し続ける叶多。
こちらから箱の中の人は見えるが、どうやら中の人から叶多の姿は見えていない模様。
バイトに出かけた後、再び箱の中を覗くと、今度は子連れの女性が刀をもった侍に斬りつけられそうになっている。
侍をとっさに払いのける叶多。
意図せず弾き飛ばされた侍は死んでしまう。
動揺した叶多は、あわてて真奈の父親に箱の事情を伝え、真奈を呼ぶ。
ところがである。
父親は真奈のことなど知らないという。自分の娘なのにである。
きつねに騙されたような感覚に陥った叶多は、真奈の部屋を探ると、そこは物置と変わり、別の部屋からは真樹という見たことのない男が登場する。
叶多は真樹のことを知らないのに、真樹は叶多のことを知っている。真奈の父親は真樹が自分の子だといい、真奈など知らないという。
それだけではない。スマホに登録してあったはずの真奈の情報は一切消え去っており、この世から真奈の存在が抹消されていたのだ。
叶多は侍を手で払いのけて殺してしまったことが真奈の存在と関係しているのではと考えはじめる。
そこで再度箱の中に介入し、先ほど斬りつけられそうになっていた箱の中の女性が駆けてきた馬に当たりそうになる所を助ける。
するとやはり、こちらの現実世界にも影響していることがわかる。
箱を見つけた際に、一つのはずだった蔵が二棟になっていたものが、再び一棟に戻っていたのだ。
一方、箱の中では、叶多に二回助けられた女性も天上の見えない何かの存在に気がついていた。具体的にそれが何かは不明のまま。
叶多はどうやったら真奈が戻るのかを考え、外をバイクで走っていると、真奈に紹介された婚約者を偶然にも見つけ、声をかけてみる。
しかし、この婚約者も真奈の存在を知らないという。
叶多はこの男に全ての事情を話してみると、男の方も興味をもち、一緒に真奈を取り戻す方法を探ることになる。
叶多は真奈ではなく、真樹となった真奈の父親の子供と話していると、幼い頃の記憶にどんどん真樹と一緒にいた記憶が侵食していくのを感じる。
そのことを真奈の婚約者に話した叶多は、箱の中の中世の人との対話から真奈の消滅のヒントを探ることにする。
箱の中にこちらの現代の世界にしかない物を入れると、箱に吸い込まれて消える。しかし中世の時代に存在する物質は消えずにそのまま届けることができることを二人は発見する。
そしてこちらの存在に気づいてもらうため、カナタと焼き付けた小さな板を箱に入れてみることにする。
はたして、、、。
時間差のある二つの世界を扱った作品は多数ありますが、現実の目の前にある過去の世界を形作る箱庭に介入することが、時間差のある現代に影響をおよぼすという、世界観設定が斬新ですね。
謎解きとともに、叶多と真奈を中心とした人間模様が最大の魅力といえます。
謎とは、主に二つです。
人間模様の見所は多数あります。
作品冒頭には、中世の旅人のような老人がこうつぶやいています。
「この一筆が 大きく広がっていく さざ波の一つだとして 果たしてこれで良いのか悪いのか 私にはわからない だか それでも・・・」
老人は背中にちょうど箱庭と同じ大きさのものを背負っています。
この老人はいったい何者なのかでしょうか。
著者の想像力は、読者をどこまで連れていってくれるのか。
一筋縄ではいかない展開が予想されますね。
※その後発売された2巻についてはこちらの記事へ。
2017年8月に単行本一巻が発売されたので読んでみました。はっとする設定で、絵もうまく、期待度大の作品といえます。

あらすじ
幼馴染で隣同士に住む大学生叶多と真奈。舞台は彼らが住む家と生活圏。叶多は12年間ずっと真奈に想いを寄せているが伝えられていない。
ある日、叶多は真奈の家の蔵掃除を手伝っていると、真奈から突如婚約者を紹介され、戸惑う。
掃除の最中、何やら人の話すような音がする。声の出所を探すと、それは土の中からだった。
掘り起こすと、数十センチ四方の木箱が出てくる。蓋をあけると、なんとそこには日本の中世時代の街並みとそこに暮らす人々がいた。
それも動いて生きている。
真奈の父親が箱をくれるというので、自宅に持ち帰り、部屋で箱の中を観察し続ける叶多。
こちらから箱の中の人は見えるが、どうやら中の人から叶多の姿は見えていない模様。
バイトに出かけた後、再び箱の中を覗くと、今度は子連れの女性が刀をもった侍に斬りつけられそうになっている。
侍をとっさに払いのける叶多。
意図せず弾き飛ばされた侍は死んでしまう。
動揺した叶多は、あわてて真奈の父親に箱の事情を伝え、真奈を呼ぶ。
ところがである。
父親は真奈のことなど知らないという。自分の娘なのにである。
きつねに騙されたような感覚に陥った叶多は、真奈の部屋を探ると、そこは物置と変わり、別の部屋からは真樹という見たことのない男が登場する。
叶多は真樹のことを知らないのに、真樹は叶多のことを知っている。真奈の父親は真樹が自分の子だといい、真奈など知らないという。
それだけではない。スマホに登録してあったはずの真奈の情報は一切消え去っており、この世から真奈の存在が抹消されていたのだ。
叶多は侍を手で払いのけて殺してしまったことが真奈の存在と関係しているのではと考えはじめる。
そこで再度箱の中に介入し、先ほど斬りつけられそうになっていた箱の中の女性が駆けてきた馬に当たりそうになる所を助ける。
するとやはり、こちらの現実世界にも影響していることがわかる。
箱を見つけた際に、一つのはずだった蔵が二棟になっていたものが、再び一棟に戻っていたのだ。
一方、箱の中では、叶多に二回助けられた女性も天上の見えない何かの存在に気がついていた。具体的にそれが何かは不明のまま。
叶多はどうやったら真奈が戻るのかを考え、外をバイクで走っていると、真奈に紹介された婚約者を偶然にも見つけ、声をかけてみる。
しかし、この婚約者も真奈の存在を知らないという。
叶多はこの男に全ての事情を話してみると、男の方も興味をもち、一緒に真奈を取り戻す方法を探ることになる。
叶多は真奈ではなく、真樹となった真奈の父親の子供と話していると、幼い頃の記憶にどんどん真樹と一緒にいた記憶が侵食していくのを感じる。
そのことを真奈の婚約者に話した叶多は、箱の中の中世の人との対話から真奈の消滅のヒントを探ることにする。
箱の中にこちらの現代の世界にしかない物を入れると、箱に吸い込まれて消える。しかし中世の時代に存在する物質は消えずにそのまま届けることができることを二人は発見する。
そしてこちらの存在に気づいてもらうため、カナタと焼き付けた小さな板を箱に入れてみることにする。
はたして、、、。
感想と考察
時間差のある二つの世界を扱った作品は多数ありますが、現実の目の前にある過去の世界を形作る箱庭に介入することが、時間差のある現代に影響をおよぼすという、世界観設定が斬新ですね。
謎解きとともに、叶多と真奈を中心とした人間模様が最大の魅力といえます。
謎とは、主に二つです。
- この時間差のある影響は、どういう法則で成り立っているのか。
- 真奈の存在は、はたしてどうやって取り戻すことができるのか。
人間模様の見所は多数あります。
- 叶多は真奈を取り戻せるのか。取り戻したとして、関係を深められるのか。
- 叶多と真樹の関係は今後どう進展していくのか。
- 叶多と叶多が助けた箱庭の中の女性は、どうやり取りしていくのか。
- 叶多と真奈の恋人の男は、真奈を見つけた後、どういう関係性になっていくのか
作品冒頭には、中世の旅人のような老人がこうつぶやいています。
「この一筆が 大きく広がっていく さざ波の一つだとして 果たしてこれで良いのか悪いのか 私にはわからない だか それでも・・・」
老人は背中にちょうど箱庭と同じ大きさのものを背負っています。
この老人はいったい何者なのかでしょうか。
著者の想像力は、読者をどこまで連れていってくれるのか。
一筋縄ではいかない展開が予想されますね。
※その後発売された2巻についてはこちらの記事へ。
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