漫画「君たちはどう生きるか」〜一番のつらい涙は取り返しのつかない過ちから
何を読もう?
最近何の本を読もうかと迷うんですよね。アマゾンやオリコンのランキングとかはありきたりで発見感がない。
自宅近くの本屋はほとんどつぶれ、唯一残っている本屋は蔵書が少な過ぎて話にならないのです。
それで、今日、わざわざ電車で蔦屋書店に足を運びました。インスパイアされる提案に期待して。
そこで出会ったのがこの提案。

人が創造する「僕たちの世界」を、「僕たちの暮らし方」「僕たちの食べ方」「僕たちの創造する世界」という3つのテーマで選書したコーナーです。

その中心に置かれていたのがこの漫画「君たちはどう生きるか」です。
漫画「君たちはどう生きるか」の概略
原作は1937年発行の小説。まだおじさんの自分も生まれていない時代です。
一気に読んでみて、そのメッセージが古びていなく、逆に今のこの閉塞感漂う今の世の中にこそ大事なことが書かれていました。
物語は中学生の男子と、他界してしまった親に代わってこの子の面倒をみているおじさんとの対話、手紙のやり取りで進んでいきます。
舞台は学校と自宅周辺。そこでの些細な出来事から、この少年が様々な生きる上での気づき、悩みを手紙としておじさんに投げかけます。
それに対して、実親から息子をしっかり生きるよう託されたおじさんから、返答とともに、含蓄のあるメッセージが投げかけられていくという構成です。
どんなメッセージ?
この少年はおじさんから「コペル君」と呼ばれています。
そう、あのコぺルニクスになぞらえた呼び名です。
どうしても自分を中心に思考してしまうという人間の究極の癖を指摘しているのです。
先日書いたこちらの記事「最近多発する認識違い~その4パターンと、なくすために必要な一つのこと」にも通じる内容でした。
「冷たい水の味がどんなものかということになると、もう、君自身が水を飲んでみないかぎり、どうしたって君にわからせることができない」
人の話をきき、本で学ぶのも大事ですが、自ら体験し、考えることの重要性を説いた例えですね。
ネット検索がここまで便利になり、情報アクセスコストが限りなく低下した今、五感を通じ自分が感じたことを通して、ユニークに考えることこそ、今の時代の各個人の価値の源泉ですね。
「実は、コペル君、君が気がついた「人間分子の関係性」というのは、学者たちが「生産関係」と呼んでいるものなんだよ」
先のコペル君の呼び方の例えと相通じる話です。人は他の人との関係性の相互作用の中で生きています。
ですから因果応報から逃れることはできません。
しかし人は時に自分だけの視点にとらわれ、謝った判断をしてしまう生き物です。
これはもう社会の歴史としても、個人の一生としても、永遠のテーマといえる問題だと思うしだいです。
「そういう苦しみのなかでも、一番僕たちの心に突き刺さり、僕たちの目から一番つらい涙をしぼり出すものは、自分が取り返しのつかない過ちを犯してしまったという意識だ」
最後になりますが、これこそ、この本を呼んで改めて噛み締めた言葉です。
この漫画では、友達が先輩に暴力をふるわれた場合に助ける約束をしておきながら、いざその場面になったら勇気を出せずに友達を見放してしまったことが発端となっています。
多くの場合、先に書いた通り、人は自分中心に物事を考え、自分の過ちを認められず、言い訳をしていまうことが非常に多いのです。
この本では、後悔するということは、本来正しいことを知り、意思決定できる能力をもっているからに他ならないと書かれています。
だからこそ、潔いよく自分の過ちを認め、立ち直り、未来に正しい意思決定をしていけばよいと、おじさんはコぺル君に語りかけるのです。
本記事のまとめ
原作は岩波文庫。そのままでは多くの人の手にとってもらえる機会はなかなかなかったでしょう。
しかしこうして漫画としてわかりやすく提示することで、今の時代にも通用する普遍的メッセージが多くの人の心に届くのです。
これこそ、このブログ「クロスメディアと社会の狭間で」に込めた想いの一つです。
今、アマゾンでベストセラーです。
特に中高生のお子様のいるご家庭で親子で読むことをオススメします。
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