「僕のヒーローアカデミア」にみるヒーロー像 

この作品には原作者である堀越耕平先生の困っている人を助けるというヒーロー像や好きだった日米のヒーロー、そして自分自身の姿が投影されていると思われる。

その結果としてこれまで異なる傾向だった日米のヒーロー像がはからずもうまい形で融合し、懐かしい王道感と、新鮮さ、熱い思いが合わさり、ヒットにつながっているように思う。

その結果が連載2年、8巻で420万部という数字だろう。2016年4月からのアニメ化により、日本のみならず、フランスやフィリピンでも話題が沸騰してきているようだ。(下記Googelトレンド参照)アニメ化前3月初旬に比べ、単行本の売上も6倍以上に跳ね上がっている模様だ。

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アメリカンヒーロー像を受け継ぐオールマイト



まず直ぐにわかるのが、オールマイトのビジュアルから連想される、アメリカンヒーローの元祖であるスーパーマンだ。

影が太く、青・赤・黄を基調としたコスチュームデザイン、筋骨隆々とした身体や無敵のパワーに影響が見える。ヒーロー科の教師という地位をもつ平和の象徴であり、独立心を反映した立ち居振る舞いもアメリカンヒーローそのものだ。

オールマイトの場合、暴走する勝己と、出久との戦いの際、「止めるべき、だが止めてあげたくない」と葛藤する姿や、個性解除時のトゥルーフォームで瘦せこけた姿も描かれているが、これはスタン・リーがスパイダーマンで創造した悩み葛藤する等身大の新たなヒーロー像に通じるものだ。

事実、堀越先生はインタビューでスパイダーマンへの思い入れを語っている。活動時間が3時間に限られるのはあのウルトラマンを彷彿させる。

ジャンプ的な日本の少年ヒーロー像を受け継ぐ出久


オールマイトに憧れる出久は対象的に身体がひ弱ないじめられっ子だ。

アメリカンヒーローが圧倒的なパワーをもっているのに対し、日本のヒーローは能力的には弱い。孫悟空もルフィも弱いから、何度も負け、負けることで強く成長していく。

出久の場合、人を助けてあげたいという思いが人一倍強く、困っている人をみると身体が先に動く姿は日本の代表的ヒーローであるアンパンマンに通じる姿だ。

少年ジャンプの王道ヒーローとして、友情、努力、勝利という三要素があるが、「ONE PIECE」に代表されるような友情要素が薄く、最近の若者に否定的にとらえられることも多い努力が強調されているのが逆に新鮮に感じられる。

勝利に通じる異能力バトルも「ドラゴンボール」に見られるように少年ジャンプの定番だが、この作品では個性という表現をとっているところが今の社会風潮ならではか。

アメリカ社会の価値観をもつ出久のライバル、勝己


一方、出久と幼馴染である勝己は、自尊心が非常に高く、ことあるごとに出久に対し「俺の方が上だ」といって見下そうとする。

また、スパイダーマンのピーターパーカー同様に、出久のことを「ナード」呼ばわりしている。出久もマンガ第1巻冒頭から「人は生まれながらに平等じゃない。これが齢4歳にして知った社会の現実」と述べる。この姿は、仲間第一の最近の日本のマンガの世界とは異なり、超格差社会であるアメリカ的な考え方を感じる。

また、出久の勝己に対する言葉「自信に満ちたかっちゃんの背中は、僕にとって格好いいものだった。けれど、個性が発現してからは、それが悪い方に加速した」からは、スパイダーマンの名言、「大いなる力には大いなる責任が伴う」を思い出させる。

個性的なプロヒーロー


オールマイト以外の4人のプロヒーローも興味深い。

シンリンカムイは樹木化させた身体を自由に操り、姿形も蜘蛛の糸を自在に操るスパイダーマンを彷彿とさせる。

巨大化する個性をもったMt.レディはセクシー路線のウルトラの母といったところか。筋骨隆々で前に出たアゴが特徴のデステゴロは、ワイルドスピードに出演している超肉体派俳優のドウェイン・ジョンソンを思い浮かべてしまう。


消火活動を得意とするプロヒーローであるバックドラフトの両手が放水ポンプの形をしている佇まいは、大阪府和泉市のローカルヒーローである消防戦隊ケスレンジャーを参考にしたのかは定かではない。



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著者 ”さぐりん”の紹介

十代の一人娘と子猫と暮らすという、レア人種のアラフィフ男子。 ユニークな遊び体験やコンテンツ作品の背景にある社会や人の本質について、感じ、考えたことを発信しています。

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