リアリティ溢れる社会派マンガ「予告犯」の見どころとは? 

極めて現代的な社会問題と、同じ社会的弱者という境遇として知りあった者同士の友情と自己犠牲を扱った3巻完結のマンガだ。

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リアリティに富む設定


犯罪予告の動画配信現場を突き止めらないよう、セキュリティとネットワーク技術を駆使する犯人。
 
予告犯罪の舞台となっているネットカフェと、犯罪予告の動画に無責任な肯定反応を示すネット民。

新聞紙に目の部分の穴だけかぶりものをして、憎むべき不正を働くものへの制裁を動画で語る、犯人のシンブンシ。日本人としても忌まわしい過去を想起させるISに酷似した姿だ。

フィリピンから日本にいる父を探すために、自らの臓器を売って肉体労働に従事する不法滞在のフィリピン人。

己の黒い欲望を隠し、メディアを駆使して真実とは異なる偽善的プロパガンダをはかる政治家や環境保護団体。

注目を浴びたいのか、憂さ晴らしをしたいのか、安易な模倣犯の出現。

犯人グループの一人が、ラーメン店でやさしく声をかけてくれた女性に淡い恋心を抱く姿。そして、自らの犯行に恐れをなし、警察に犯行を公衆電話から密告。その途中で思い留まり葛藤する姿。

このあたりの設定が極めて現代的でリアリティに富むものとなっており、大人が引き込まれる要素を多分に含んでいる。

真の動機


そして3巻の終盤で、主犯の男の真の動機とそのためにとっために自己犠牲の行動の背景が明らかになり、犯人を追っていた美人女刑事が涙を流す展開でクライマックスをむかえるのだ。

"それが誰かのためになるという間違いのない確信を得た時"
"人は利得を超えた行動をとることがある"

最後は主犯の奥田の自己犠牲と謀略により命を留めた3人のその後がうっすらとした希望とともに描かれる。

ラストのコマは、今回の事件の直接的なきっかけとなった、フィリピン人、「ヒョロ」こと、ネルソン・カトー・リカルテの墓標がまぶしいほどの太陽光に包まれて終わるのだ。

一読の価値あるマンガと言えるだろう。




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著者 ”さぐりん”の紹介

十代の一人娘と子猫と暮らすという、レア人種のアラフィフ男子。 ユニークな遊び体験やコンテンツ作品の背景にある社会や人の本質について、感じ、考えたことを発信しています。

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