小説ダイナーのコミカライズの感想〜同設定を利用した別作品。命とは誰のもの? 

数年前に読んで印象深かった小説「ダイナー」の漫画版が20181/19に単行本(2巻まで)として発売されたので、読んでみました。

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この原作小説は「おすすめ文庫王国2013年」国内ミステリー第1位にも選出された傑作です。

冴えない一人暮らしの女性(オオバカナコ)が金欲しさに携帯闇サイトのバイトに手を出したことから事件に巻き込まれ、人身売買を通して殺し屋だけが客のレストランの店主(ボンベロ)に買われる。そして客として訪れる一癖も二癖もある殺人鬼の客相手にウエイトレスとして働くという流れは原作と同じです。

しかしボンベロとカナコのキャラデザが原作の雰囲気から想像されるものとはかなり異なります。

漫画のキャラデザは、ボンベロはいわゆる今風の切れ長の目をしたスマートなイケメン、カナコはスタイルがよくアンナミラーズの制服みたいな姿でレストランで働きます。

原作小説はもっとハードボイルドなテイストなので、ボンベロはスキンヘッドにサングラスが似合う筋骨隆々ないかつい男、カナコはどこにでもいそうな普通の女性(決して性的魅力はないイメージ)を想像していました。

この違いに最初は違和感と戸惑いを感じてしまったのですが、読んでいるうちにこれはこれで同じ設定に基づいた別ものとして楽しめる作品という認識に変わりました。

次々登場する殺人鬼たちも原作とこの漫画では違うキャラクターです。

これらの違いはおそらく小説と漫画での読者層を意識したものなのでしょう。

原作を知らない人にとってはこの漫画のテイストの方が入り込みやすいように思うからです。

しかし原作のファンの中にはこの漫画のキャラデザが雰囲気を壊しているということで受け付けない人もかなりいそうです。

こういった違いがあるものの、作品の発するメッセージ、「生きるとは何か」、「命とは誰のものか」という問いかけは変わらずにうまく描かれているように思います。

生きるとは何か


殺人鬼の子供を守りたい一心でスカルジャックなるゲームに参加することになるカナコ。

スカルジャックとはブラックジャックのルールをアレンジした殺人鬼グループ独自のゲームです。ひいたカードの数の合計値が21に近い人が勝ちという点はブラックジャックと同じですが、21との差分の数だけ負けた人はチップを受け取ります。(21を超えた場合は差分の2倍)

チップには縁がナイフ並みにとがったスカルプチップなるものを使い、負けて受け取ったチップはプレイ中、口にいれなければいけないルールです。更に5ゲーム後に、口にこのチップが入った状態の最下位の者の顔面を1位のものがぶん殴ります。

プレイ中にチップを吐き出せばその時点で死刑、殴られたときに吐き出せば負けというエグいゲームです。

カナコは序盤最下位で11ものコインを口に入れることになります。当然口の中は血だらけ。

しかしそこでめげずに必死に勝機を探る中で発した言葉が次の言葉です。

誰にも頼れないなら自分で探せ!!

闇サイトでバイトを探すというどん底の生活を送っていたカナコですが、そこはまだ地下1階程度の生ぬるい世界だったのです。

このレストランに来てから生きるか死ぬかという局面に何度も遭遇し、底が見えない世界を味わう中、自分自身の力で道を切り開いていく姿が描かれています。

カナコはこれまで本当の自分自身の力に気づけていなかったのでしょう。

命とは誰のものか


過去に母親を殺害されたトラウマをもつ殺人鬼スキン

彼は母親の作るスフレが大好きでしたが、完璧なスフレを食べるとそのトラウマを思い出してしまうため、異物をスフレに混ぜて食べることで精神の均衡を保っていました。

ところがそんな彼のこころの中を知らないカナコはよかれと勝手にスフレの異物を取り除いてスキンに食べさせたことで、彼の精神を狂わせ、死に追い込んでしまうのです。

命とはまさしくその人自身のものです。

他人からはうかがい知れない心の闇があります。自分の心と他人の心は異なる。

それをわきまえず、他人の心に土足で踏み込む権利は他の人はありません。

このことは親子、友人、兄弟、上司と部下といった様々な人間関係を構築・維持していく上で忘れてはならないことでしょう。


緊張感あふれるスリリングな展開とともに、カナコを取り巻く人間模様が面白く、生きる上での大事なメッセージが投げかけられています。コミックを読んだ方はぜひ原作小説も読んでみて下さい。原作を読んだ方はこのコミックもぜひ!




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著者の紹介

十代の一人娘と子猫と暮らすという、レア人種のアラフィフ男子。 ユニークな遊び体験やコンテンツ作品の背景にある社会や人の本質について、感じ、考えたことを発信しています。

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