漫画 決闘裁判のあらすじ、考察〜他力的神判、当事者主義、真実主義に想いを馳せる 

ヤングマガジンサードで連載中の宮下裕樹先生の作品で、第1巻が先月発売になったばかり。

中世ヨーロッパに実在していた当事者同士での決闘による裁判をテーマに、主人公のニコ・マイルズという少年が正義を追求する中での成長する姿を描いた物語です。

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ネタバレ含むあらすじ


舞台は17世紀の封建制度により統治された神聖ローマ帝国。

その城塞都市、ブライザッハ・アム・ラインでは、裁判として原告と被告が決闘により勝敗を決める決闘裁判が行われ、敗者に対して斬手などの残酷な刑が見世物として行われていた。

虚偽の証言者には神が決闘において自ずと裁きを下すという思想に基づくものである。

姉を殺されたニコは、その犯人である大男、ギュンターに教会で裁判の宣誓を行い、決闘することになる。

ニコは少年であり体格的ハンディがあるということで、武器の使用が許可された。

歯が立たず追い込まれていたニコだが、その場に訪れていた狼のアドバイスに基づき、剣を逆さにもって斧のようにして振り回す殺撃により、形成逆転でギュンターを破る。

この狼とともに、この場を訪れていた法王庁直属の巡回裁判員ルーインズは、司祭が裏でギュンターに不正な装備を施していたことを見抜き、民衆の前で暴き出す。

神聖な存在のはずの教会(司祭)が腐敗していたのだ。

巡回裁判員とはローマ教皇も名の元、決闘裁判に不正が持ち込まれていないか監視する役割なのだ。

ニコは、真実が真実として証明される世界を求めていた。

闘いの後、ニコは道で倒れているところをとある商団に救われる。

馬車に乗せられて移動中、野盗に襲われると、今度はこの野盗のボスに決闘を挑む。

そして今回もあの狼のアドバイスに基づき、この野盗のボスの虚を突き、見事勝利をおさめたのだ。

その後ニコは、この狼を従えた巡回裁判員ルーインズとともに行動をともにすることになる。

移動途中、妻を寝取られ殺された夫のオットーと、その犯人とおぼしき若い男、カイルとの決闘裁判に出くわす。

劣勢の中、カイルは隠していたナイフでオットーを突き刺し、闘いには勝利するも、不正を働いたことで教会に捕らえられてしまう。

しかしことの真実は、嫉妬心と支配心の強いオットーが日々の生活で妻に暴力をふるっており、カイルとの仲を疑った末に殺害していたのだ。

カイルはこの女性と懇意にはしていたものの、一線は超えていなかった。真実を明らかにするためにオットーを挑発し、決闘裁判になるように誘導して復讐を遂げたのだ。

次にニコ、ルーインズ、狼はフライブルク・イム・ブライスガウという大都市に足を踏み入れる。

そこは一見よい暮らしぶりに見えたが、一部の特権階級のみが潤い、一般市民を迫害して暮らしている格差社会だった。

これを黙ってみていられないニコは、ここでも決闘裁判を申し入れるのだった。

感想、考察



中世ヨーロッパに実在した決闘裁判とニコの生き方を通して、正義や真実とは何か、欧米と日本の社会のモノの捉え方の違いなどを考えさせてくれる作品ですね。

ヨーロッパに限らず、古代の世界では世界各地で自然界を司る神の判断で有罪か無罪を決める神判が行われていたんですよね。

神判のやり方はどういった自然現象にゆだねるかで様々です。

熱湯に手を入れて火傷具合で審議する、水中に被告人を投げ込み沈めば無罪とする、パンやチーズを飲み込ませ、苦しまずに飲み込めたら無罪とするなどです。

今の時代では考えられない思考ですが、自然法則に神の意思が宿っていると考えていた当時の人々からすると、当たり前の考え方だったのでしょう。

決闘裁判もこの神判の延長線にある考え方といえます。

作品内での神父の言葉からこのことが伺えます。

虚偽の証言者には神がこの決闘において自ずと裁きを下すであろう‼︎


もう一つこの決闘裁判を題材に考えるべき視点は、日本の裁判での実体的真実主義に対する当事者主義であることです。

自己の利益と権利のためにフェアに戦うことが正義であり、双方が納得すれば、それが裁判での真実になる。

個人に宿る力こそ正義、自己のことは自分で守るべきとする考え方ですね。

これに対して裁判のもと、真実を明らかにし、虚偽や悪を処罰し、罪なき者を救うのが正義。この正義を実現するのが国家司法の目的と考えるのが日本です。

日本の裁判とは歴史的、文化的に異なるものであることを知らしめてくれる作品といえそうです。



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著者 ”さぐりん”の紹介

十代の一人娘と子猫と暮らすという、レア人種のアラフィフ男子。 ユニークな遊び体験やコンテンツ作品の背景にある社会や人の本質について、感じ、考えたことを発信しています。

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