漫画「おとろし」~グロい表現はないものの、各話が怖く不気味な理由とは? 

昨日の記事で、一番怖いのは「人のこころ」と書きました。そんな怖い人のこころを描いたいい漫画はないものかと探していたら、見事にハマる作品を見つけてしまいました。

カラスヤサトシ先生の「おとろし」です。

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この「おとろし」という言葉は、江戸時代の絵巻に登場した妖怪のことです。

和風ホラーといえば長い黒髪の女が多頻度で登場しますが、その原型ともいえる存在ですね。

おととい体験した「東京タワーに届いた柩」での最恐の演出も、まさにこの黒髪の女をイメージした演者でした。

漫画「おとろし」はなぜ怖いのか



怖い作品というと、残酷な殺害・拷問シーン、切断された人体や血などが登場するいわゆるスプラッターものか、貞子のような不気味な幽霊、お化けの登場する作品を思い浮かべます。

しかし、この漫画にはそういった表現はほとんど登場しません。

では何が怖いのか。

人の物・こと・他人への様々な執着が描かれ、それがこちらはでは制御できないもので、思いもよらない結果をもたらしていることです。

各話とも不気味な感触で終わるのは、この「制御できない」ことと、「思いもよらない結果」という二つの要因がからんでいるように思います。

第7話の具体的な二つの怖い要素をあげてみる



まずは第7話「猿の夢」。あらすじはこうです。

雪山を歩いていた若い女性。目の前に見たのは2年前に行方不明になった我が子によく似た小猿。

小猿もじっとこちらを見ている。

家に帰って旦那にこのことを話すも相手にされない。

忘れられず、夢の中でまたあの小猿に会いたいと願う。

そうこう過ごしている間に、二人目の子供が無事生まれる。

旦那は過去は忘れればよいと喜んでいるも、この母親にとっては、夢の中で会った弥太の猿が目の前にいるとしか思えない。

自ら夢の中で雪山から連れて帰ったのだと。

上機嫌で外に洗濯物を干そうとした瞬間、驚愕の事実に気づく。

そう、雪山で、小猿の弥太から猿の母親の存在を聞かされていたのだ。我が子を連れ去られた母親の気持ちは人間も猿も同じ。

このことに気づいた時は、時すでに遅し。

目の前の木の上には人間の赤ん坊をだき抱えた猿の姿があったのだ!

さて、この7話の怖い不気味な二つの要素、「制御できない」ことと、「思いもよらない結果」とは何か。

制御できないのは、母親の息子への強い愛です。夫が行方不明になった弥太に対して諦めがついているのに対して、母性本能のなせるわざか、夢の中での小猿の姿に息子の幻想を見て、どこまでも執着して追いかけてしまう。

思いもよらない結果とは、最後のコマに描かれているように、母親猿に新たな赤ん坊を奪われてしまったシーンです。

人間でなく、猿の親というのが不気味です。

第21話の具体的な二つの怖い要素をあげてみる



21話のあらすじはこうです。

裕福な家の主人が主人公。何でも、何かの事情で自宅にお金を置いておけない場合、大きな信用のある家に預けるのが常だと。

問題はこれから。この主人にお金を返してもらおうとすると、そんな金は預かった覚えはないとシラを切られる。その上、逆ギレされて、騙そうとしているのはお前の方だと言われてしまう。

その後お金を騙し取られた人がこの裕福な家の敷地内で自殺したことを知ると、今度は手下に川に死体を捨ててこいという。周りには川に身を投げて自殺したとまた嘘をつき、民衆を信じ込ませてしまうという恐ろしさ。

この事態を見かねた家来の男は、この主人に真相を迫るも、シラを切られてしまいます。そしてこれでは自分も存在を消されてしまうのではと焦り、この主人を殺害してしまうのです。

この主人の家の者に殺害を責められると、自分は悪くないとシラを切る。そう、許せなかった家の主といつの間にか同じことをしてしまいます。

そして最後の最後に、この主人は実は自分の父親であることを聞かされるという皮肉な終わりを迎えます。

さて、この21話の怖い不気味な二つの要素、「制御できない」ことと、「思いもよらない結果」とは何か。

制御できないのは、この家の主のシラを切り通すところです。人が死んでも何ら動じていないのです。こんな人が身近にいたらやっかいで恐ろしいです。どうにもできないのですから。

思いもよらない結果とは、この場合、自分が殺害した相手は実親だっというオチです。悲劇的であるとともに、結局親子で同じ過ち(シラを切ること)を犯してしまっているところに怖さを感じます。

こうした何とも不気味で、人のこころの闇がうごめく現実とあの世の狭間を舞台にした短編が24話ならぶこの作品。

この夏の締めとして、人のこころを見つめる作品としてオススメです。



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著者 ”さぐりん”の紹介

十代の一人娘と子猫と暮らすという、レア人種のアラフィフ男子。 ユニークな遊び体験やコンテンツ作品の背景にある社会や人の本質について、感じ、考えたことを発信しています。

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