”NHKにようこそ!”など、ニート・引きこもり漫画主人公の行動パターンとは? 

ニート・引きこもり主人公の生活を描く中で、人生での生きることの難しさや大事なことを教えてくれる漫画3作品、「俺はまだ本気出してないだけ」「サルチネス」「NHKにようこそ!」。

「俺はまだ本気出してないだけ」の主人公、シズオは40歳で会社を辞め、ハンバーガーショップでバイトをしながら漫画家を目指す。「サルチネス」の主人公、中丸 タケヒコは17年間修業と呼ぶ引きこもり生活を送っている31歳、「NHKににょうこそ!」の主人公、 佐藤達広は大学を中退し、引きこもり生活4年の21歳。10歳違いで家族関係や生き方も異なるが、以下のような共通性がみてとれる。

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頻繁に突拍子もない行動をとるが、生活状況は基本変わらず


42歳のシズオは家でゴロゴロしているシーンが多い。下記2作品のタケヒコや達広ほど日々の行動でハメを外してはいないが、本業である漫画家としての作品テーマが行き当たりバッタリで進歩が見られず、冴えないバイト暮らしの日々であるところは最後まで変わらない。

3巻以降、シズオが書いた作品がこちら。要は行き当たりばったりにその時々の自分を語っているだけなのだ。

  • 「俺に届け」
  • 「人生改革」
  • 「人生300年」
  • 「走馬灯」
  • 「俺は親分」
  • 「俺には俺の守るべきダメさがある」
  • 「ミミミな俺」
  • 「寝てまて‼!」
  • 「俺は赤ちゃん」
  • 「パンを焼く」




「サルチネス」の タケヒコは自分の感情をコントロールし、どんな状況でも平常心でいられるよう、次のような修行をつんできた。

  • 首から下を自宅の庭に埋めて3か月間過ごす
  • 2か月の間、1日18時間ただひたすら時計の秒針を読み続ける(誤差がでたら2時間延長)
  • 2年間、一言も言葉を発せず、ひたすらフラフープを持ったまま生活する(フラフープを落としたり言葉を発したらじいさんとディープキス)


そして妹の愛ちゃんの「お兄ちゃんが結婚しなきゃ 到底できない」という言葉をじいさんから聞かされ、自分が妹を不幸にしてしまっていると悟ったタケヒコは、自宅を出て東京での自立に向けた生活を始める。

その後のさすらう生活の中でも、町中で出会った住所不定無職の男性を奴隷としての友人とし、下着泥棒の現場をおさえた大学生の家に居候し始め、二人を「ブツブツマン」なる奇妙なペイントを施した姿にするなど、奇抜な行動を次々と起こす。

その後もこの3人での生活が続き、何でも引き受ける便利サービスなるビジネスを始める。様々なぶっ飛んだ特徴的キャラクターが登場し笑わせてくれるが、まともな現実生活とはほど遠く、一般常識人からみると、最終巻までずっと奇妙な無職のおじさんのままである。

一方、 「NHKにようこそ!」の主人公、 佐藤達広は、親の仕送りで生活する中、 バイトをしようと履歴書をもって会社に足を運ぶも、うまくコミュニケーションをとれず挫折。薬を飲んで自殺を考えるが実行はできない。自宅に訪問してきた宗教勧誘やバイト面接などで知り合った岬に仕事を聞かれ、とっさにソフトを開発するクリエイターだと嘘をついて取り繕う。

その嘘がきっかけとなり、隣の部屋に住んでいた高校時代の文芸部の後輩である山崎薫とともに、エロゲーを共同でつくりはじめる。

その後も以下のように次々と新たな行動を起こすものの、いってしまえば無職の自堕落な生活をする若者のままである。

  • 母親からの電話には就職が決まり、彼女もできたと咄嗟にごまかしの嘘をつく
  • 現実から目をそむけ、ネットゲー廃人のような生活を送る
  • マルチ商法にひっかかる
  • 薬を使った快楽に溺れる
  • 高校時代の先輩から不倫を迫られ同棲


少数の変わり者パートナーとの親密な生活


シズオの毎日の生活を共にするのは父親と娘である。最終巻で母親が突如家出したこと、娘はひどいいじめを受けていた過去をもつことが明らかになる。父親はおそらく年金ぐらしか、いつも家の中におり、シズオが就職して地に足をつけて生活するよう促すシーンが何度も登場する。

この二人の他、学生時代からの親友である宮田がシズオにとってのかけがえのないパートナーである。宮田はパン屋を開くもうまくいかず、シズオに遺書を残して家を後にし、自殺をはかる。しかし死に切れずシズオの元に戻ってくる。そんな宮田をシズオは暖かく受け入れる。

「サルチネス」のタケヒコが生活を共にする人物は最初は妹の愛ちゃんとじいさんのみ。その後家出をしてからも、たまたま知り合ったホームレスの谷川と下着泥棒の現場を目撃された大学生河合 タイチとの3人での生活である。特に谷川とタイチに対しては奴隷のように扱い理不尽な要求をなげかけ、恐怖政治ともいえる異常な接し方をする。



一方、 佐藤達広は基本一人暮らしではあるが、多くの時間を過ごすのは、高校の後輩で重度のオタクである山崎、 佐藤をひきこもりから立ち直らせようとする美少女の岬のみである。岬が佐藤に接近した真の目的は、自らの幸せを自ら捨て去ることで、自分自身が強い人間に生まれ変わるためという屈折したものである。
7巻では高校時代に一緒にトランプをして幸せな時間を過ごしたことのある、柏瞳と同棲生活を送る。瞳はこれまた薬物依存症で自障壁があるという変わり者。


もがきながらも、最後は何かをつかむ


シズオは結局何作も漫画を書いたが結局入選までは至らず、漫画家にはなれていない。つまり無職のバイト生活のままである。

一般的な常識からみたら、シズオはいい年して漫画家目指しているバイト暮らしの冴えないおっさんである。

しかし、シズオは幸せである。なぜなら愛する娘、親友、父親に囲まれて生活しているのだから。最終巻最後のシズオを見つめる娘、順子の表情が何よりもこのことを物語っている。

漫画家としてデビューさえできていないシズオだが、デビューという成果が幸せの要因ではないのだ。シズオは漫画家を目指す生活の中で、十分幸せを感じているのだ。

引きこもり主人公3人は、一見引きこもり生活というネガティヴは人生を歩んでいる。しかし、3作品とも読み終わったあと、ほっこりした気分を感じさせてくれる。主人公3人も最後は何かをつかみ、前を向いて生きているのだ。

タケヒコの人生、生活は一般常識からみたら、どうしようもないものだろう。30歳過ぎて無職。特別何かを目指しているわけでもなく、奇抜な行動で家族に迷惑をかけることも多い。

しかし、人の価値観は様々。何に価値があるかは、相対的なもの。

最終話で最愛の妹、愛ちゃんが子供を授かったことを知らされ、これ以上ないほどの嬉し泣きをする。彼にとって最上の幸せを感じた瞬間だったのだ。
「オレはよぅ・・・生まれてきて良かったよ・・・」

一方、佐藤達広は上述のように様々なことに手を染めるが、全てうまくいかず自分から逃げ続ける。しかし最終話でアパートの中で岬と愛をもって向き合うことで自分のそれまでの心の動きと行動パターン、その根底にある自分の弱さと外界との関係を理解する。

そして自分の意思をもって岬を好きになる、つまりは自分の意思で責任をもって外の世界と向き合う力を手にするのだ。



一見引きこもりの生活は変わっていないように見えるが、シズオ、タケヒコ、佐藤の3人は人生で自分にとって大切なものをつかめ、自分なりの幸せを勝ち取ることに成功したのだ。

人の幸せとは人生のどこにあるのだろうか。
そんな問いを投げかけられているような3作品である。


若者引きこもりの実態


ここに興味深い二つの統計データがある。

平成27年度全国都市交通特性調査(国土交通省)によると、約20年前に比べ、20代の外出回数が3割減少傾向にあるのに対して、70代シニアの外出回数は3割増加。2015年での休日移動回数は70代の方が20代よりも多いという驚くべき結果。
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それを裏付けるかのように、15~34歳人口に占める若年無業者の割合はここ20年で1.8倍に増加している。(平成28年版子供・若者白書/内閣府より)
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しかし、このデータだけでは見えてこない人それぞれの幸せは存在するのだ。
引きこもり=不幸とは限らない。彼らは今日も何かをつかんでいるかもしれないのだから。

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著者 ”さぐりん”の紹介

十代の一人娘と子猫と暮らすという、レア人種のアラフィフ男子。 ユニークな遊び体験やコンテンツ作品の背景にある社会や人の本質について、感じ、考えたことを発信しています。

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