「龍の歯医者」~龍と歯の存在から意味を考える 

昨日再放送されたこのアニメを観て、壮大な映像美と、とんがった音響に惹かれたものの、結局何を伝えたかったのかがピンとこない作品だなあというのが所感。



そこでタイトルにもなっている「龍」と「歯」の意味するものを調べ、そこからこの作品の意味を考えてみた。

日本の文化学者である濱田陽氏によれば、日本の龍は大陸の龍、仏教の龍、土着の蛇神という3つの要素が溶け合っているという。そして大陸の龍は権威性、仏教の龍は守護性、 土着の蛇神は土地との近接性を特徴としているとのこと。

この3つの要素は確かに「龍の歯医者」でも受け継がれているように思える。

冒頭のシーン。上空から圧倒的力で戦艦を攻撃し、尻尾の長いその威容が明らかになる龍は権威性の象徴だ。

龍は、龍の棲む国が危険にさらされたとき、その国を守るために 力を使うことがあると、公式サイトに記載されている。まさに守護性の龍だ。
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そしてこれは、遠い昔に結ばれた龍と人の契約にもとづくものという。つまり龍の棲む国との近接性をもっているのだ。

近寄り難い威容をほこりつつ、その土地に密接した 守り神的存在なのだ。

どこかで聞いたことのあるようなフレーズだ。

そう。

こちらの記事で取り上げた「妖怪」=「人間が心の闇、恐怖心と距離をとり、対象を象徴化して生まれたもの」ではないか。
実際、 「怪異・妖怪伝承データベース」の中にも「龍」は多数登場している。

一方、「歯」は、 「声を出す」「表情をつくる」などの役割をもち、日々の人間に不可欠な存在である。歯がなくても生命は維持できるかもしれないが、「人間」らしい文化的生活を維持することはできないだろう。

龍にとっても歯は力の源泉でありかつ、唯一の弱点であると公式サイトに記されている。

そして、この物語では、龍の歯に、荒魂(人の心を荒廃させて争いへ駆り立てる神の働き)のような存在として、多様なむし歯菌がつく。この虫歯菌は暴れまわり、人を殺してしまうこともあるのだ。だから選ばれた人間は、虫歯菌を退治するための歯医者になっている。

ここまでくると、この作品のメッセージ性が見えてくる。

龍の最も大切な部分である「歯」を人間がメンテナンスするとは、人間が自身の心の奥底をみつめ、制御することの難しさをうたっているのではないだろうか。心を操るのは容易でない。だからこの作品でも龍の歯医者には試験をパスした一部の人しかなれないのだ。

近年、日本で精神疾患の患者数は増加の一途をたどっている。厚生労働省のデータによれば、2014年の精神疾患患者数は392万人で、その5年前である2009年の約2倍に増えているのだ。

夜中に走り回る「ヨナキ虫」、近寄ると絡みつく「ニョロリ虫」、普段はなついているが激高すると襲ってくる「カブリ虫」など、きちんとメンテナンスしていないと悪さをしかけてくる。

自分に心の動きのパターンを把握し、うまく付き合っていくことが必要なのだ。

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著者 ”さぐりん”の紹介

十代の一人娘と子猫と暮らすという、レア人種のアラフィフ男子。 ユニークな遊び体験やコンテンツ作品の背景にある社会や人の本質について、感じ、考えたことを発信しています。

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