男女入れ替わり作品(漫画、映画など)を横断的に分析してみた~共通点と差異点 

今日は6作目の男女入れ替わり作品を加えた横断分析。
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6作品目はアニメ化もされたあの「悪の華」でも有名な押見先生の漫画、「ぼくは麻里のなか」。 9巻で昨年9月に完結している。

厳密にいうと、他の男女入れ替わり5作品と違い、この作品の二人はこころが入れ替わったわけではなく、女の子の別人格としてこの男の子の人格が表出していたことが最終巻で明らかになるのだ。

共通要素



①物語がはじまるきっかけとして、本人たちも予想しなかったようなアクシデントや日常生活とは異なることが起こり、その結果二人の身体が入れ替わる。

上京後、友達づくりに失敗し引きこもりになっている大学3年生の小森という男の子が主人公。自宅近くのコンビニでよく見かける女子高生、麻里に恋い焦がれるも、声もかけられずに 「コンビニの天使」と妄想して過ごす。

ある日の夜、いつものようにコンビニで麻里を見かけた後、何気なくあとをつかていくと、前方の麻里が突然足を止め、ちらっと振り向いて小森の方を振り向く。

その瞬間、小森は意識がなくなり、気が付くと翌朝、麻里の部屋で麻里の姿になっていた、、、という展開。

ネタばれになるが、最終巻まで読んでから再びこのシーンを読むと、別の情景となるのがこの漫画の面白いところ。
実は麻里も小森のことを日々観察しており、振り向いた瞬間に麻里の中に、過去のトラウマが引き金となって想像上の「小森」の人格が出現していたのだ。

②入れ替わる二人は共に思春期の男女
この作品も、大学生の男の子と女子高生という、思春期から大人になっていく過程で禁断の関係性にある年代の二人が入れ替わったように描かれている。

漫画というメディアの特性もあり、これまでの6作品の中でも最も男女の関係性が生々しくエロチックに描かれており、際どさを通り越したえげつない表現も多々登場する。

③二人の入れ替わりに気づいているのは本人たち以外にも一人いる
この作品も見事にこの法則があてはまっている。麻里の同級生である依(より)という眼鏡少女だ。

1巻の後半で、依は麻里がこれまで使ったことのない「かわいい」という言葉や、友達に泣きつく態度を不審に思い、麻里に対して「おまえは誰だ」と問いつめる。

そしてついに麻里は、「・・・ぼくは小森功・・です・・・」と白状するのだ。

入れ替わった事情を麻里から全てきいた依は、小森のこころの麻里とともに、本当の麻里の心がどこにいったのかを探していくという、この作品の長い旅が始まるのだ。

少しづつ麻里とともに核心に迫っていく依だが、本当は麻里の幼少期のトラウマによる二重人格が原因とわかるのは最後の最後だ。

④男女の身体が入れ替わることで、お互いが性器を気にする表現がある
先にもふれたが、この作品での性的な描写はかなりエグい。

もしウブな男の子が好きな憧れの女の子の身体を手に入れたら、どうなるかという視点での構図が頻繁に生々しく描かれている。

麻里が小森のこころで自分の裸の身体を眺めるだけでなく、自慰行為までしてしまう。

また、入れ替わった後の麻里の姿をした小森が、元の小森の自宅に行って自慰行為を目撃し、更には慰めてやるという倒錯感漂う世界まで描かれている。

この当たりは押見先生ならではの世界か。

実際は麻里の中の小森人格の行為である。

差異要素



①作品テーマ、メッセージ
先にみてきた本当の入れ替り5作品では、入れ替わった二人や周辺の登場人物への相互理解が主テーマだった。

しかし、当作品では、8巻までは男女の身体が入れ替ったかのように展開しつつ、最終の9巻で、実は麻里が幼少期までは祖母の命名で「ふみこ」という名前であり、祖母の死後、母親のこだわりで「麻里」と改名されたことが明らかになる。

この改名とその後の母親の育て方が、麻里が自分を見失い、二重人格を生み出したことの要因だったのだ。

つまりこの作品の主テーマは自己のアイデンティティの再構築ということではないかと思う。

自分とは何者なのかということ。

一見この作品は荒唐無稽なエロい作品かのように表面的にはみえてしまうかもしれないが、非常に現代的で奥深い作品だ。

実際、人格障がいの要因の一つとして、母親と娘の幼少期の関係性が医学的にもよく語られている。

麻里は、近くに住む自堕落で気ままな生活を送る小森がうらやましく、私生活まで覗き見ているうちに、自分の中にこの小森の人格を作り上げてしまったのだろう。



②入れ替わった男女のその後
映画「転校生」、「ホットチック」、ドラマ「パパとムスメの7日間」同様、この作品でも最後、二人は元に戻る。

この作品では元に戻るといっても本当は入れ替わったわけではないので、元の麻里の人格を取り戻すということになる。

そして改めて「麻里」として家族と関係を再構築し、依とも絆を深め、幸せをつかんでいくことになる。

③キーとなるアイテムや描写
この作品のキーアイテムと言われると難しい。

入れ替わりの瞬間に何かが登場するわけではなく、ただ振り返って見られただけ。

よく登場するアイテムとしては、自堕落な小森がよくやるゲームと、部屋に多数あるエロ本ということになる。


下記は2017/3/3時点の記事


今日は5作目の男女入れ替わり作品を加えた横断分析。

5作品目はあの「逃げ恥」の中でガッキーのセーラー服姿のパロディ元にもなっていた「パパとムスメの7日間」(2007年夏ドラマ)だ。

原作は五十嵐貴久さんの小説。

共通要素



①物語がはじまるきっかけとして、本人たちも予想しなかったようなアクシデントや日常生活とは異なることが起こり、その結果二人の身体が入れ替わる。
この作品もまさにこのパターン。
千葉の山奥に住んでいる恭一郎の妻の母親が倒れたという知らせを受けて一家で祖母の家へ。

しかし恭一郎が到着したころには身体は既に回復。結局皆で食事をして恭一郎と高校生の小梅は翌日帰ることに。
帰り際にこの義母が山からとってきた10年に一回実がなるという伝説の桃をお土産としていただく。

そして帰りの電車の中。車内で2人、桃を食べていたところ、突然地震に見舞われ、2人とも怪我をして意識を失い、病院に運ばれてしまう。

ようやく意識が戻り、自分の姿をみてびっくり。恭一郎と小梅の身体が入れ替わっていたのだ。

②入れ替わる二人は共に思春期の男女
これについては映画「ホットチック」同様に、部分的にしかあてはまらない。
今回は片方は「パパ」なのだから!

年齢が離れていることに加え、父娘という関係性をうまく使ってコミカルな表現に落とし込んで、親子愛のテーマ性につなげている。

③二人の入れ替わりに気づいているのは本人たち以外にも一人いる
面白いことにこの作品「パパとムスメの7日間」でも見事に当てはまっている。

最終話で、桃の伝説を語る小梅の祖母が、元の姿に戻った二人にこう語るシーンがあるのだ。

「でもね。本当に大事なのは戻ってからの7日間。・・・仲良くしないとまた入れ替わっちゃうんだよ。でもね、7日間、お互いを変わらず思い合うことができたら、二人は永遠にふか〜いふかい絆で結ばれる。さーて、あんたがたはどうだろうね。へっへっへ。」

④男女の身体が入れ替わることで、お互いが性器を気にする表現がある
こちらは海外映画と異なり、家族でみることも多いテレビというメディアの性質上、際どい表現は抑えられ、以下の限界表現となっている。

  • 娘の姿になってしまった恭一郎が脚を開いて座る
  • 父の姿になってしまった小梅に、女子高生の姿をした恭一郎が風呂場で目隠しをされる
  • 自分の身体を父親に触らせないために、風呂場で父親の姿の小梅が代わりに洗ってやる


差異要素

 

①作品テーマ、メッセージ
これは入れ替わる二人の関係性と作品としての世界観で規定される。

この作品はタイトルにある通り父娘の入れ替わりということで、親子愛を中心としつつ、更にも登場する家族間の絆、小梅が入れ替わった恭一郎の会社での奮闘を通した職場の仲間の絆、恭一郎が入れ替わった小梅の憧れる先輩の男性との恋愛や同級生との友情など、ドラマらしい人間愛につつまれている。

この最終話での小梅の言葉が、作品テーマを象徴している。

「本当は前よりパパのことうざいって、思ってない。前は何であんなにパパのことがうざかったんだろう?」

②入れ替わった男女のその後
このドラマでは、冒頭の入れ替わり同様に、最終話で伝説の桃のなる山で、小梅の姿をした恭一郎がバランスをくずし、助けようとした小梅とともに斜面から転げ落ちてしまうアクシデントが発生する。

その時、恭一郎の姿をした小梅が今度は小梅の姿の恭一郎を助けたいと強く思ったことで、運ばれた病院のベッドで二人は元の姿に戻っていることに気づくのだ。

更に、元に戻った後の7日間、仲良くしないとまた入れ替わってしまうという設定も組み込まれている。

このルールはこれまでの4作品にも、下記原作の小説にもないドラマならではのルールとなっている。

③キーとなるアイテムや描写
このドラマでのキーアイテムはあの昔話にも登場する桃だ。

10年に一度しか実をつけず、食べた人同士が強く想い合うことで入れ替わるという伝説の桃という設定が物語を動かしている。

しかし、実はこの古典的アイテム、冒頭に紹介した下記原作小説には登場しないのだ。
その他、キャラクター設定などにも異なる箇所がある。



今までみてきた男女入れ替わり4作品にはなかったサラリーマン社会のダメな点が、コミカルに風刺されているのも特徴だろう。

更に派生して職場の若い女性部下との不倫、嫁との三角関係も登場し、作品に奥行きをもたらしている。


下記は2017/2/22時点の記事

以前比較した男女入れ替わりの3作品に、昨日書いた映画「ホットチック」を加えてみるとどうなるか。今回は海の向こうの作品だ。



共通要素


①「ホットチック」も3作品同様に、物語がはじまるきっかけとして、本人たちも予想しなかったようなアクシデントや日常生活とは異なることが起こり、その結果二人の身体が入れ替わる。

具体的にはジェシカがショッピングモールで店員を騙して手に入れたイアリングが入れ替わりのきっかけとなる。

このイアリング、胡散くさい代物で古代からの呪いがかけられており、ペアーを分けてつけてしまうと、その二人の身体が入れ替わってしまうものだったのだ。

ガソリンスタンドでイアリングの片方を落としてしまったジェシカ。たまたまガソリンスタンドに強盗として店舗内にいたおっさんが偶然それを見つけて拾うというアクシデントがおこるのだ。

②入れ替わる二人は共に思春期の男女

これについては「ホットチック」は部分的にしかあてはまらない。なんせ片方は小汚いおっさんなのだから!

まさに年齢が離れて過ぎていることにより、コミカルで荒唐無稽な展開のオンパレードで笑いをとっている。

しかし、それだけでなく、「大事なのは外見でなく、通じ合うこころ」というテーマをうまくこの組み合わせに持ち込んできている。

③二人の入れ替わりに気づいているのは本人たち以外にも一人いる

「ホットチック」でもこれはあてはまり、おっさんの姿で部屋で泣くジェシカに対して、部屋に入ってきたまだ幼い弟がこういうのだ。
「やっぱり!お姉ちゃんだね」

④男女の身体が入れ替わることで、お互いが性器を気にする表現がある

「ホットチック」はこの点を笑いの主軸の一つにしている。特におっさんの姿のジェシカは、友達に性器を見せてと言われ爆笑されるは、用をたす時の不自由さをコミカルに思いっきり誇張して笑いをとりにいっている。

差異要素

 
①作品テーマ、メッセージ
「ホットチック」は親子、兄弟、友人、異人種間、ゲイといった多様な人間関係において外見でなく、こころのつながりが大事だということをテーマとしている。

「君の名は。」のような時空間を超えた想いの伝搬は描かれていない。

②入れ替わった男女のその後
「ホットチック」では入れ替わりアイテムのイアリングを取り戻すことで元の姿に戻るハッピーエンドの展開。

一方、「思春期ビターチェンジ」では最初の小学生時代での木からの転落で入れ替わった後、高校生になってもそのままの姿のままである。

「君の名は。」では何度も入れ替わったり、戻ったりする。

「転校生-さよならあなた-」では元の身体に戻るのはいいが、その後少女は病から死を迎える。

③キーとなるアイテムや描写
「ホットチック」は呪いのかかったイアリングがキーアイテム。描写で印象的なのは何といっても女子高生のこころを演じたロブ・シュナイダーのクネクネした動きだろう(笑)。

「君の名は。」では入れ替わりを導く 「組紐」と「口噛み酒」、映像美として空を駆け抜ける彗星が印象深い。

「転校生-さよならあなた-」では、入れ替わりの場となった水場、美しい信州の自然と特産物としての蕎麦が心を和ませる。

「転校生-さよならあなた-」は特別なアイテムなどは登場せず、心に残るのはまわりの人とその関係性だ。 

今後、更に「男女入れ替わり」作品を横断的にみていきたい。


下記は2017/2/18の記事


まずは第一弾の比較として、ついに日本映画の中で世界興行収入第1位となった君の名は。」、日本の男女入れ替わりコンテンツの原点ともいえる 大林宣彦監督の映画「転校生」(1982年)のリメイク版「転校生‐さよならあなた‐(2007年公開)、そし2012年10月25日から「COMIC ポラリス」で連載中のマンガ「思春期ビターチェンジ」をとりあげる。

共通要素



①物語がはじまるきっかけとして、本人たちも予想しなかったようなアクシデントや日常生活とは異なることが起こり、その結果二人の身体が入れ替わる。

「君の名は。」では、 3年前に「組紐」を手渡されたことと、 「口噛み酒」を飲んだことがきっかけとなり男女が入れ替わる。

映画「転校生-さよならあなた-」では、幼馴染の男女二人が男の子の転校で再び出会い、思い出の水場で大きな柄杓を使って水を飲もうとした時、誤って二人とも水の中に転落。水中から這い上がってきた時に二人の身体が入れ替わる。

マンガ「思春期ビターチェンジ」では、木登りしていた小学生の男の子が誤ってたまたま木の下に居合わせた同級生の女の子の真上に転落。その結果二人の身体が入れ替わる。

②入れ替わる二人は共に思春期の男女
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「君の名は。」は高校生、
「転校生-さよならあなた-」は中学生、
「思春期ビターチェンジ」は小学生の男女が入れ替わるという設定だ。

成長などの作品テーマに合致し、流行りの先駆けとなる若者に共感をもってもらうために、学生の男女の入れ替わりであるという設定は外せない要素となる。これが男の大人同士だと「フェイスオフ」のような犯罪系の物語になるだろし、年齢が離れて過ぎていると物語に無理が生じ、コミカルで荒唐無稽な展開になりやすい。

③二人の入れ替わりに気づいているのは本人たち以外にも一人いる

「君の名は。」では一葉おばあちゃん。
「転校生-さよならあなた-」では、一美の恋人の山本、
「思春期ビターチェンジ」は佑太の弟の木村 春樹がそれぞれ主人公男女の入れ替わりに気づいている。

④男女の身体が入れ替わることで、お互いが性器を気にする表現がある

やり過ぎは問題だが、三作品ともこの微エロ要素をうまいさじ加減で取り込んで描いている。


差異要素

 
①作品テーマ、メッセージ
人により解釈が異なるだろうが、「君の名は。」は時空間を超えた人のつながりの大切さ、「転校生-さよならあなた-」は想いを一つにした人の強さ、思春期ビターチェンジ」は人への真の理解の大切さをテーマとしていると思う。

②入れ替わった男女のその後
「君の名は。」では何度も入れ替わったり、戻ったりする。その後 彗星事故により入れ替わらなくなった後、 口噛み酒の力で別の時間軸で再び入れ替わり、彗星事故を防いだ後、数年後、今度は元の自分の姿で再開して物語は終わる。

「転校生-さよならあなた-」では水場での転落で入れ替わったのち、不治の病を少女の身体が患った後、再び水場に転落し、元の身体に戻る。最後は少女が元の身体とともに死を迎える。

「思春期ビターチェンジ」では最初の小学生時代での木からの転落で入れ替わった後、高校生になってもそのままの姿のままである。

③キーとなるアイテムや描写
「君の名は。」では入れ替わりを導く 「組紐」と「口噛み酒」、映像美として空を駆け抜ける彗星が印象深い。

「転校生-さよならあなた-」では、入れ替わりの場となった水場、美しい信州の自然と特産物としての蕎麦が心を和ませる。



「思春期ビターチェンジ」は特別なアイテムなどは登場せず、心に残るのはまわりの人とその関係性だ。 学校の仲間から距離を置かれていたが、 中身が女である佑太から優しくされたことで心を開き、 佑太 に恋愛感情をいだいた木下 広美。 暴力事件を起こし数ヶ月の停学処分を受け、孤立している 橘 隼人など。



今後、「男女入れ替わり」作品を更に追加して横断的にみていきたい。

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著者 ”さぐりん”の紹介

十代の一人娘と子猫と暮らすという、レア人種のアラフィフ男子。 ユニークな遊び体験やコンテンツ作品の背景にある社会や人の本質について、感じ、考えたことを発信しています。

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